アラフィフ女の世迷い言

大好きなのはスティーブペリー

トライアル・バイ・ファイアー

最近また聴き込んでいるのは、JOURNEYの

「トライアル・バイ・ファイアー」です。

この作品は、JOURNEYのスタジオアルバム通算12枚目、スティーブ・ペリー在籍のラストアルバムです。

日本の告知ポスターです、

レア物だと思います。↓
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リリースは1996年、10月。つまり26年前ですね。

全16曲(日本盤ボートラ含む)、あと1曲入れると2枚組にもなろうかという長さです。

 

アルバム全体の印象は、私が名付けるなら、

「薄氷に還ってきたジャーニーサウンド」でしょうか。前作「レイズド・オン・レィディオ」からおよそ10年の間にJOURNEYのメンバーは色々な経験を積んで、このアルバムに活かしているのです。

が、そのパワーバランスが、、、非常に危うい感じが出ています。全員が遠慮しあっているような。

それでいて、各曲は創り込まれていて、いわゆる手抜きは一切ない…のです。

 

16曲は、長過ぎて間延びしている、少なくとも4曲ほどは落とすべきだったのでは?とする感想も見受けますが、じゃあどれを削るかというと私には、一曲も落とす楽曲がないのです…

ということで、曲の紹介を。

 

1.Message of Love

楽器のようなアカペラからフェードインしてくるやいなや、ハスキーなスティーブの声で始まる、オープニングにシングルカットに最適な楽曲。

途中のギターリフが、セパレイト・ウェイズそのもので、待ち侘びたファンなら「JOURNEY還ってきた!」と感涙ですよね。

 

2.One More

歌詞の内容からして、アルバムタイトルの伏線を張る楽曲となっています。

前アルバムよりさらにストリングスを多用しており、禁忌に近付く荘厳な様子が伝わってきます。

 

3.When You Love a Woman

96年グラミー賞ノミネートされたシングルカットもされた楽曲で、MVが歴代JOURNEYのなかで1番か2番か?というくらい良い出来となっています。

もっとも、MVはスタジオ演奏を様々なアングルから撮っているだけなのだけど、カメラワークが秀逸です。全体的に流れるように映していて、スティーブのカットはほぼスタンド式のオーバーヘッドマイク越しに撮られていて、画面が流れるとピントがスティーブからマイクに替わり、スティーブのボーカルがより強調されます。また、細やかなスティーブの左手をカメラが追うのでスティーブがフレームアウトしたり、ニールショーンのギター・ソロに合わせてスティーブがエスコートするように画面外へはけていったり。

楽曲の最初と最後はグランドピアノを弾くジョナサン。ドラムのスミスとベースのロスも、ストリングスの前後に映るのでこの曲はMVと観賞したい一曲です。

 

4.If He Should Break Your Heart

音程の取りにくそうな、歌うのが難しそうな楽曲という印象です。スティーブならサラッと歌っているのですが…コーラスもスティーブのセルフコーラスを重ねているようです。

 

5.Forever in Blue

前曲と、まるで繋がっているように聴こえるのは何故でしょうか?雰囲気が似ているのか、テンポは違うのに、2曲でひとつみたいに感じるのは、歌詞のせいかもしれません。このアルバム全体がいわゆるダークな雰囲気があるのですが、その序章みたいに感じるのです。5曲目で序章というのも変でしょうか?

 

6.Castles Burning

ニール・ショーンのギターが、歪みを効かせてバックで睨みを利かせているかと思えば、シンセも歪みながら弾きまくり、スティーブの声が引っ込んで聴こえるくらいに楽器強調の楽曲となっています。

 

7.Don't Be Down on Me Baby

美しいミディアムロックバラード。

ドラムがかなり控えめなせいか、ピアノとベースがよく聴こえます。ストリングスの艶が効果的に出ている‥とでもいうか、語彙力なくてスミマセン。

 

8.Still She Cries

A面ラストにマッチした楽曲です。

メロディーラインがしっかりしていて耳に残る。

ティーブの歌い方も切なくしっとり…と。

ピアノソロの間奏があり、ギターはほぼなし…

ニール・ショーンがよく我慢した一曲となってます。

 

レコードで言えば、ここからがB面です。

9.Colors of the Spirit

民族楽曲のようなオープニングで、地平線から太陽が登るその直前のような雰囲気が、最後まで飽きさせないぞというメッセージにも取れるような楽曲だと思うんです、実はこのアルバムで一番最後までこの曲が私には難解でした。

 

10.When I Think of You

シングルカットしても良さげな、バラードです。

やはりスティーブは、歌って聴かせるボーカリストだなと。

雰囲気は When You Love a Woman に似ていて、さらにボーカルが前面に出ている感じですね。シングルにしなかったのは余りに同曲に似すぎだからかも、と思います。

 

11.Easy to Fall

コーラスワークが秀逸です。

JOURNEYといえば、こうだよね…と思わずにはいられない。おかげで暗さが少し隠れています。

仄かに明るいような、大丈夫、最後まで聴けるわ。

という、、、希望のような楽曲です。

 

12.Can't Tame the Lion

アップテンポで、ギター全開の楽曲。

ギター少な目の曲のぶん、取り返すぜ!みたいな。

全体的にキーが高く、スティーブが歌い難そうに聴こえちゃうのが切なくて。

シングルカットされてるんでしたかね、本国だけなのか?ライオンは飼い慣らすことは出来ないってタイトルなんですが、これが意味ありげ。

ティーブは、ニールとジョナサンをライオンと思ってそうだし、ニールとジョナサンは、スティーブをライオンだと思っていそう。ジョナサンも、ニールとスティーブをライオンだと思ってるんだけど二頭で行くなら自分はどっちと?と自分がライオンであることはわかっていそうな。

飼い慣らすのが難しいライオンが、3頭もいたらそりゃ危ないわ…とここでこのアルバムを支配する、「薄氷の上の危なさ」の正体に気付かされた…と思ったのです。

 

13.I Can See It in Your Eyes 

疾走感あるロックチューンです。日本盤には、ボーナストラックとしてこの曲が挿入されました。

フロンティアーズのなかに入ってても違和感なく収まりそうな。ドラムのスミスがクタクタになりそうな楽曲だと思うんですよね、ニール・ショーンのギターソロも多いですが、ニールは弾きまくりたいはずなのでそこは、良し。

 

14.It's Just the Rain

タイトル通り、雨の日に聴きたくなるスローなナンバーです。曲に漂う少し気怠い感じが雨という天気を醸し出していますし、曲が終わりに近付くにつれ、雨音と雷鳴がよく聴こえてきます。

本来ならこの雨が上がれば、JOURNEYのメンバーはより一層堅い絆で結ばれるはずだったのではないでしょうか…。

 

15.Trial by Fire

つねづね私、JOURNEYのアルバムタイトル曲は若干印象が弱いと思っています。かなり聴き込んでから良さが解るというか。

このトライアル・バイ・ファイアも、日本語訳を読みながらようやく理解したものです…

「またあなたの元に戻ってきました。混乱の中から引き上げて下さい」とは、正にスティーブのこころの声だったのかと。

少なくとも、このアルバム制作時にはまたJOURNEYとしてやってゆくつもりだっただろうに、その後に傷心し引きこもりになるなんて…ボタンの掛け違いとはひとりのボーカリスト人生を四半世紀にわたり閉ざしてしまうのですから、、、

 

ティーブ・ペリーのような繊細でテクニカルなボーカリストはそうそう居ませんから、バンドにとってもペリーにとっても、不幸なことであったとしか言い様がありませんね。

 

16.Baby I'm Leaving You

HIDDEN TRACK。

明らかにアルバムコンセプトとは違うタイプの曲であり、最初は違和感がありましたが、何がどうしてこの曲があることで悲壮感が和らぎませんか?

奇しくも別れの曲でありますが、、、曲の一部が、スティーブのソロ曲「ゴー・アウェイ」に似ていて、妙に安心してしまうのは、あと聴きだから?なのではでしょうか。

 

つらつらとアルバム各曲の紹介をしてみましたが、全体的に重く、ある種の緊張感に満ちているのです。

お互いを探り合うような、遠慮も感じます。

それでもこの長さのアルバムが上手くまとまっているのは捨て曲なしだからでしょう。長いな…と思う方は、二枚組と思って聴くがよろしいかと。

 

各曲のソングライティングには、最初にS.Perryとあります、その後にN.Schonや、J.Cain。

 

全盛期のアルバム、エスケイプから15年。

 

年齢相応に落ち着き、儚さと脆さも醸し出したこのアルバムがスティーブ在籍時のラストアルバムです。


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