どうもスティーブ・ペリーの声には、何か魔法の周波数でもあるような気がしてならない。
自分が好調時に聴けばますます元気になれるし、
ナーバスな時に聴けば心に沁み入るし、
心身不調な時に聴けばサメザメと泣けるのだ。
大体アラフィフにもなると、滅多なことでは涙は出ない。が、そんな時にスティーブを聴けばちゃんと涙が出るので本当に有り難い。
私のなかでそういう位置付けの数曲のうちのひとつが、86年のアルバム「レイズド・オン・レディオ」のラストに収録されている。
「Why can't this night go on foever」(邦題・永遠への誓い)だ。
84年にペリーは、ソロアルバムをリリースして成功を納めた。ジャーニーでのキツいツアーに次ぐツアーに追われなくとも、自分はソロでも行けるのではないか?と考えたと言われている。
しかし、自身がフロントマンを務めるジャーニーから降りたらジャーニーはどうなるのか?病床の母をアルバム制作の傍らで看病もままならず、その母にジャーニーで頑張るようにと諭される。
どうすればいいのか、悩んだと言う。
そんな中で作られた(永遠への誓い)は、今ある大切なものとの決別を惜しむ、思い残すことはないのかと逡巡し、この夜が永遠に続くなら…と祈る歌詞の内容となっている。
母を見送ったことも、深い傷となっただろう、信じたバンドメイトとの少しずつ確実に拡がった深い溝、バンドを去らざるを得なかったリズム隊への思いや、近い将来には自分もここを離れることを心に秘めての歌に違いないように思える。
頂点を極めてしまったら、維持することはそれより遥かに困難で、全てを犠牲にしてもなお足りないことに怖れもあっただろうし、燃え尽きて声も辛くなりいつしか歌うことに意味を見い出せなくなったのだろう、
そんな時分に生まれた楽曲だから、こちらが弱っていたらもうグサグサと刺さってしまい、私自身が辛いのかペリーの当時を思って辛いのかもうわからなくなってしまうのだ。
このアルバムを最後にペリーは一旦リタイアをする。丁度その頃はジャーニーに次ぐ幾多の人気バンドが
既にいて、限界を感じたのかも知れない。
当時の彼自身しかわからない感情があっただろう。
とにかくこの曲は、不安定な時にはかなり刺さるので
要注意の楽曲である。
そして、名曲中の名曲である。